2011年9月6日火曜日

英語の通じない国の病院で緊急オペラシオン

海外保険についてはバックパッカーの間でもいろいろな意見があるようです。近年、保険料の価格は上昇傾向にあり、保障範囲にもよりますが一年くらいの長旅になると10万円は軽く越えます。入らなくてもなんとかなるかな?とつい思ってしまうのもうなずける金額です。私はクレジットカード付帯の保険があるから大丈夫、とたかをくくっていましたが、出発直前に確認してみると3カ月限定の保障だったので、あわてて別途加入し、泣く泣く13万円くらい支払いました。


保険に入る一番のメリットは、命を最優先して行動することができるという点にありますから、銃を突きつけられたときは迷わず荷物をすべて差し出すつもりです。盗難保障で全部戻ってくる荷物に固執するのは馬鹿げています。いざというとき、このように理性が合理的に働くかどうかはわかりませんが…… 一方、病気・怪我関係で可能性が高いのはマラリアなどの感染症と、それから強盗に殴られたり刺されたり撃たれたりしたときでしょうか。ATMで金を引き出して渡した直後に発砲されたというケースもあるようですから、おとなしくしていれば大丈夫というわけでもないのです。


いずれにせよ、いざというときにスムーズに進行できるように、緊急連絡先は三つの場所にメモって別々に保管してあります。パスポートにも小さく書き込んであるので、最悪の事態のとき、パスポートだけは勘弁してくれと強盗と交渉をして取り戻せれば迅速に行動に移れます。まあパスポートも高値で取り引きされるようですから交渉が成立するかどうかは運に左右されます。その場で空気を読んで決めようと思います。



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5日くらいまえから左足のふくらはぎが蚊に刺されたなと気づいていたものの、とくに痒くもないし、と放置していたらだんだん腫れてきて、ああこれは痛痒いパターンかなーと思っていたらあれよあれよという間にぷっくら膨らみ色はドス黒くなり発熱も止まらず、何しろ痛くて痛くてしまいには歩行困難になりました。歩けないから観光はできないし(いや頑張れば歩けますが、この足で世界一の迷路とも言われるフェズの市場を歩く気にはさらさらなれません)、軽い怪我で病院へ行って、保険申請のリハーサルをしておくのも悪くないなと思い、治療を受けることに決めました。


まず保険会社に電話をし、提携している病院を教えてもらい、そこに行って書類に記入すると、お金を支払わずに治療が受けられるキャッシュレスシステムというものがあるのですが、電話をしてみるとモロッコはこのシステムに対応していないらしく、診断書と領収書をあとから郵送すると返金されるという仕組みだそうです。だから病院もどこでも良いんだとか。また、病院までの交通費も領収書があれば支払われるんだそうですが、モロッコのプチ・タクシーの運転手にレシートを要求してもそんな準備があるはずもなくタクシー代は自腹。


ところでモロッコは英語が通じません。アラビア語かフランス語、スペイン語が少々、という程度です。しかしまあ、患部を見せて、テキトウに塗り薬を貰って、うまくいけば飲み薬の抗生物質も処方してもらえるかな、という程度に考えていたので言葉わからなくてもなんとかなるかーと妊婦に囲まれて待つこと4時間(なぜか私以外の患者は妊婦ばかりで、足の痛みをこらえつつ、この病院で良かったのだろうか?という疑問が脳内をうずまいていました)、診断室に入って患部を見た瞬間、フェズには何日滞在するんだ?と英語で質問されました。まさかの通院?と思いながら2日だと答えると、これは切らないといけないなーみたいなことを今度はフラ語とジェスチャーで私に伝えてきました。理由の説明は理解できず。



ではいざオペラシオン!と思ったら、なんと、お前金は持っているのか?と聞かれました。相場がまったくわからないのでいくら?と聞くと、15000円くらいだとのこと。そんなにたくさん現金を持っていなかったのであとで払うと言うと、手術する前に用意しろと言われたので足が痛いのをこらえてATMを探し回りました。



手術自体は簡単なもので、麻酔を二本打って、ハサミでチョキチョキ切って、膿を取り出し、切り開いた箇所をゴソゴソいじって、包帯を巻いておしまい。余談になりますが、世界放浪へ向けて予防接種もかなり打ちましたが、麻酔の注射ってそれらに比べ物にならないくらい痛いのですね。麻酔注射なんてめったに打ちませんから油断していました。術後の様子を見て、包帯を交換したいので明日の朝また来いと言われ終了。飲み薬のような気の利いたものは一切もらえず、麻酔が切れて手術前よりも痛い足をひきずりながら宿へ戻ってこの日記を書いているところです。明後日までに、16kgのバックパックをかつげるくらいまで回復していることを祈る。